居住する自治体にかかる重力に課税される税。自治体の緯度・標高データから算出した重力等級をもとに税率が決まる。国民が負担し、各自治体が国に納める。

導入の背景

  • 緯度が高いほど重力は大きくなり、低いほど重力は小さくなる
  • 標高が高いほど重力は小さくなり、低いほど重力は大きくなる

という物理法則に目を付けた政府によって世界で初めて導入された。新たに重力を課税すべき財産と見なして税収を補うことが目的であると政府は国民に説明していたが、真の目的は政府が同時期に定めた広域新経済特区への移住促進による社会・経済の効率化であった。特例的に特区では重力税は課税対象外とされたため、その思惑が露呈するまでに時間はかからなかった。

 真の目的に政府が言及しなかったのには2つの理由がある。1つは地方在住の国民から地方の切り捨てと誤解され、政府への不信感が高まらないようにするため、もう1つは移住判断を国民の自由意志に委ねることで移住コストの政府負担をを避けるためであった。

導入の結果

 新たな税負担となったことで、導入前には国民の多くが重力税に反対意見を持っていた。

 しかし、広域新経済特区への移住を早々に決めた国民や比較的重力税負担の小さい自治体の住民からは反対意見は少なく、また、行政サービスの利便性や労働生産性のような社会・経済の効率化への期待から次第に重力税に肯定的な意見が増えてきている。特区への年間転入者数は現在に至るまで前年を超え続けており、人口増加率は全国トップである。

 一方で、新たな問題も出てきている。重力税の高い「高緯度・低標高」地域では転出者増加に伴って住宅の空室率が上がり続けており、企業も労働力の確保に苦戦し始めている。政府はこうした問題に対して静観姿勢を崩しておらず、「国民の居住・移転の自由は憲法で保障されている。政府は個別の問題には関知しない。自治体は創意工夫により柔軟に対処してほしい」とコメントしている。

導入後の評価

 重力税導入による間接的な移住促進策の成否について判断するにはもうしばらく年月を要するものの、実際に移住が活発化していることから移住促進効果はあったと言える。

 とはいえ、税率の高さには何らかの緩和措置を求めたいところだ。各自治体の税率はそれぞれの緯度・標高から算出した重力等級によって決定されるが、等級が上がるほど税率が累進的に上がるように設計されているため、重力等級の高い自治体ほど生活への影響が非常に大きい。広域新経済特区へのオフィス移転が活発化しており、域内雇用の拡大も確認されつつある今の状況では、もはや重力税の税率を緩和しても特区への移住者増加と発展が揺らぐ可能性は低そうだ。

 重力税はその結果に対して好意的な評価が見られるものの、地形条件が偶然合致したという見方は根強い。他国での導入に関しては慎重にならざるを得ないだろう。

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